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Drummer’s Disc Guide – 2023-24 Winter

Winter 2023-24

【A】=アルバム 【M】=ミニ・アルバム 【E】=EP 【V】=DVD、Blu-ray


【A】ザ・ローリング・ストーンズ『ハックニー・ダイアモンズ』

d:チャーリー・ワッツ/スティーヴ・ジョーダン

往年のファンがニンマリするツボを押さえつつ
新たな世界を切り拓くフレッシュさが同居

チャーリー・ワッツが亡くなり、誰もが悲嘆に暮れた2年前。しかし、世界最高のロックンロール・バンドは強かった。スティーヴ・ジョーダンが代役で参加したツアーの成功と手応えから、一気にこの傑作を仕上げてしまうとは恐れ入る。冒頭のスティーヴのビートと重なるミックのカウントに期待が高まり、ギターのリフが鳴り響くと興奮は最高潮に……「まだまだこれから!」と本気になった彼らを誰も止められない。前半はハード・ドライヴィンな曲が並び、温まったところで満を持してチャーリー参加曲の登場、という演出がニクい。ロックンロール・ダンス・チューンのM7は出色の出来。後半のメロウな流れに心を打たれ、珠玉のブルースで締めるとは完璧過ぎる。スティーヴと並び、プロデューサーのアンドリュー・ワットの功績を称えたい。往年のファンが思わずニンマリするツボを押さえつつ、新たな世界を切り拓くフレッシュさの同居。そう、こんなストーンズを待っていたのだ。(横山和明)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】チャーリー・ワッツ/スティーヴ・ジョーダン(d)、ロン・ウッド(b、g、vo)、キース・リチャーズ(b、g、p、vo)、ミック・ジャガー(vo、per、g、harp)、アンドリュー・ワット(b、g、vo、etc)、マット・クリフォード(p、key、org)、ビル・ワイマン/ポール・マッカートニー(b)、エルトン・ジョン(p)、スティーヴィー・ワンダー(p、syn)、レディー・ガガ(vo)、他

発売元:ユニバーサル 品番:UICY-16195 発売日:2023.10.20

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【A】ブリンク182『ワン・モア・タイム』

d:トラヴィス・バーカー

今までの作品を思わせるような曲の中にも
新しいスパイスやアレンジが入っている

ついにこのときが来た。バンドはときにぶつかって、一緒にやれなくなることはたくさん見てきたけど、トラヴィスの事故やマークの癌による闘病など、いろんな苦難の中、トムが復活し、再度オリジナル・メンバーで制作された今回の作品は、誰もが待ち望んだまさにど真ん中のピースになっている。ジョン・フェルドマンとのタッグで、さまざまなラッパーからFEVER 333のようなバンドまでをプロデュースと大忙しのトラヴィスだが、作品に関しては今までの作品を思わせるような曲の中にも新しいスパイスやアレンジが入っているので、感覚的にはブリンク182のベスト盤をそのまま進化させたような、初めてブリンクを聴く人にもこの1枚で説明がつくような代表的なアルバムになっている。コロナも明け、WWWY2023のヘッド・ライナーも務め、絶賛ワールド・ツアー中の彼らが、トラック・ミュージックが主体の音楽の流れにもう一度、バンドやロックの風を吹かせるだろう。(Bunta/TOTALFAT)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】トラヴィス・バーカー(d)、マーク・ホッバス(vo、b)、トム・デロング(vo、g)

発売元:ソニー 品番:SICP-6561 発売日:2023.10.25

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【A】ミカエル・ブリッチャー、ダン・ヘマー、スティーヴ・ガッド『イット・ウィル・ビー・オールライト』

d:スティーヴ・ガッド

オープニングの1小節目でその人間の能力を
遥かに超えたコントロール/サウンド/グルーヴ

コロナで延期になってしまった2度目の来日公演がやっと実現した、今年10月のライヴを目の当たりにした。もちろんわかってはいたけど、あらためて本当に非現実的過ぎる光景とサウンドのその衝撃度……ため息どころか笑っちゃうような次元。この3人が繰り広げるあまりにもピュアでソウルフルな音楽芸術が、一体どれくらいの人々に届いてるんだろうか。2012年にスティーヴ・ガッドがコペンハーゲンで開催したワークショップで、その教材として用意されたミカエル・ブリッチャーの楽曲と、彼の演奏をいたく気に入ったことから始まったこのトリオ・プロジェクトは、作品リリースとツアーを止まることなく継続して、そして10周年を迎えてのこのニュー・アルバムは、オープニングの1小節目でその人間の能力を遥かに超えたコントロール/サウンド/グルーヴで、またもや完全に降参。“Honest music……No one plays like this anymore”とガッド本人が語っているそのサウンドに、またしてもため息しか出なかった。(沼澤 尚/シアターブルック、ブルース・ザ・ブッチャー)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】スティーヴ・ガッド(d)、ダン・ヘマー(org)、ミカエル・ブリッチャー(sax)

発売元:C-NUT 品番:PPSI-3418 発売日:2023.09.10

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【A】チック・コリア・エレクトリック・バンド『ザ・フューチャー・イズ・ナウ』

d:デイヴ・ウェックル

この5人だからこその世界に引き込まれて
15分越えの楽曲も一瞬に感じてしまう

ロックからファンク、ラテン、ジャズといった多くのジャンルが、“チック・コリア印”なフュージョンに昇華され、独自のサウンドを確立しています。もちろん、同じようにドラミング・スタイルを確立させたデイヴ・ウェックルさんの多彩な演奏も存分に堪能できる、ファン必聴のアルバムです。ウェックルさん本人がミックスに携わっており、ドラムはもちろん、各楽器の演奏内容を細かく楽しむことができるような、クリアなミックスになっているのも魅力的ですね。この5人だからこそのコンビネーション、安定感のあるユニゾンやシンコペーション、ダイナミクスから生み出される世界に引き込まれて、15分越えの楽曲でさえも一瞬に感じてしまうほど聴き入ってしまいます。ウェックルさんのサウンドの綺麗さ、ソロのバッキングのアプローチの引き出しの多さ、吸いつくような反応の良さを楽しめます。個人的には、「アイシェッド」のテーマ間のジャムが聴きどころですね。(川口千里)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】デイヴ・ウェックル(d)、チック・コリア(p、key)、ジョン・パティトゥッチ(b)、フランク・ギャンバレ(g)、エリック・マリエンサル(sax)

発売元:ユニバーサル 品番:UCCJ-3046〜7 発売日:2023.11.03

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【E】リンゴ・スター「リワインド・フォワード」

d:リンゴ・スター

歌とドラムの究極の一致形と言えるくらい
自然で無駄のないプレイ

ライヴ活動が制限されたパンデミック期間中、精力的に新曲を発表してきたリンゴ。21年の「ズーム・イン」、「チェンジ・ザ・ワールド」、昨年の「EP3」に続く、4曲入りEPの新作がリリースされた。スティーヴ・ルカサー、ブルース・シュガー、ジョー・ウォルシュら、旧知の仲間が脇を固める中、特筆はやはり、ポール・マッカートニーが久々に楽曲提供して参加したM2。ビートルズ「オクトパス・ガーデン」(リンゴ作)を想起させるメロディは、ポールからの胸熱な返歌、オマージュにも思える。現在83歳、衰えを知らぬリンゴは全曲でドラムとヴォーカルを担当。歌とドラムの究極の一致形と言えるくらい自然で、無駄のないプレイが、聴く側の心をポジティヴで温かい光で照らしてくれる。(岸田 智)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】リンゴ・スター(d、per、vo)、トーランス・クライン/マット・ビゾネット/ランス・モリソン(b)、ポール・マッカートニー(b、etc)、ウェストン・ウィルソン/ジョー・ウォルシュ/スティーヴ・ルカサー(g)、マイク・キャンベル(g、cho)、ベンモント・テンチ(p)、ブルース・シュガー(p、key)、他

発売元:ユニバーサル 品番:UICY-16191 発売日:2023.10.13

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【A】-真天地開闢集団-ジグザグ『慈愚挫愚 四 -最高-』

d:影丸

影丸のキレのあるドラミングと
流れるようなグルーヴを堪能していただきたい

去年、3枚目のアルバムを出したばかりのジグザグ。同年11月に自身初となる武道館公演をソールドアウトかつ最高のライヴで締め括り、まさに脂が乗っている状態で畳み掛けるように「-最高-」と名づけられた4枚目をリリース。“4枚目にして最高とつけたか!!”と率直に思ったのだが、真意は初回限定盤のM13を聴けば理解できるだろう。M13の中で「賛否両論あるだろう」と命も語っている通り、今までのジグザグの色とは異なり、かなりポップな仕様となっている。それはひとえに命の今の心境が出たとのこと。そんな命の世界観を今は楽しむと同時に、ポップな楽曲だろうが故菅沼孝三氏のテクニックを受け継ぐ影丸のキレのあるドラミングと、流れるようなグルーヴをぜひ堪能していただきたい。(遠海准司/己龍)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】影丸(d)、龍矢(b)、命(vo)

発売元:CRIMZON 品番:CCR-045 発売日:2023.10.04

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【A】ピーター・ガブリエル『i/o』

d:マヌ・カチェ
per:ゲド・リンチ

とことん贅肉を削ぎ落とした
シンプルながら立体的なサウンド

UKポップ・シーンの巨匠、ピーター・ガブリエルの22年ぶりにもなるスタジオ作品が登場した。73歳、50年以上の芸歴にもなると言うのに、相変わらずイギリス人特有のちょっとひび割れたような深い声、1987年の名作『So』のようなリリシズム、いろんなものが健在で驚いてしまう。ピーターのソロ・ワークを支えてきた、トニー・レヴィンとマヌ・カチェの力強い鉄壁リズム・セクション。その上に構築された、とことん贅肉を削ぎ落とした、シンプルながら立体的なサウンド。ワールド・ミュージックに関わりが深かった頃の、あの3rdアルバムのようなミニマリズムも垣間見える。奥行きや声のイメージの異なる2つのミックス、タイコの音の聴き比べも楽しい。(芳垣安洋/Orquesta Libre、On The Mountain、etc.)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】マヌ・カチェ(d)、ゲド・リンチ(per)、ピーター・ガブリエル(p、syn、programming、etc)、トニー・レヴィン(b)、デヴィッド・ローズ(g)、ケイティ・メイ(g、etc)、トム・カウリー(p)、オリ・ジェイコブス/ブライアン・イーノ(syn、etc)、ジョシュ・シュパク/パオロ・フレス(tp)、メラニー・ガブリエル(cho)、他

発売元:ユニバーサル 品番:UICB-1023〜4 発売日:2023.12.01

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【A】Vaundy『replica』

d:BOBO

タイトル曲「replica」の熱唱からは
さらなる飛躍を確信する

本作のCD版はDisc1が新曲15曲+1シークレット・トラック、Disc2はあたかも“Vaundy大図鑑”のような20曲で全36曲。わずか数年の間に彼が築いた世界にあらためて感服し、タイトル曲「replica」の熱唱からは、さらなる飛躍を確信する。その大作のクレジットにはクールなミュージシャン達が名を連ねているが、ドラマーの座は1人。そう、アノ人! 如何に彼がこの場に必要とされ、その土台を支えているのかがわかろう。一気に国民的人気曲となった「怪獣の花唄」は、ベーシック・アレンジを生かしたままの完全な新録音へ。ドラム・パートも国民圧倒バージョンへと生まれ変わり、ミックスも激熱。コピーするならばもうコチラ一択!(山本雄一/RCCドラムスクール)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】BOBO(d)、Vaundy(vo、etc)、有江嘉典/上ちゃん/HSU/マーリン・ケリー/吉田一郎(b)、生形真一/コリー・ウォン/TAIKING/田渕ひさ子/TK/hanna(g)、江﨑文武/TAIHEI(p、key)、真砂陽地(tp)、MELRAW(sax)、川原聖仁(tb)、武嶋 聡(fl)、Leia(cho)、他

発売元:SDR/ソニー 品番:VVCV-9〜10 発売日:2023.11.15

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【A】Rockon Social Club『Don’t Worry Baby』

d:青山英樹

やりたいことを全部詰め込んだ多彩ぶりだが
1枚通して聴くとすんなりと耳に馴染んでくる

男闘呼組の4人(成田/高橋/岡本/前田)に、青山英樹と寺岡呼人を加えた6人組が早くも2作目となるオリジナル・アルバムをリリース。軽快なロックンロールあり、ホーンが賑やかなファンクあり、メロウなAORあり、壮大なバラードありと、自分達のやりたいことを全部詰め込んだといった多彩ぶりだが、1枚通して聴くと思いのほかすんなりと耳に馴染んでくる。このあたりはプロデュースを手がけた寺岡の手腕であり、メンバーの懐の深さといったところだろうか。青山も「ねぇ、そろそろ」でゆったりと心地良いグルーヴで魅せたかと思えば、一転「Go To Hell」ではスラッシーなドラミングが炸裂。こちらも曲ごとに趣を変えるプレイで作品を盛り立てている。(竹内伸一)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】青山英樹(d)、高橋和也(vo、b)、成田昭次/岡本健一(vo、g)、前田耕陽(vo、key)、寺岡呼人(all other instruments)、他

発売元:TOKYO RECORDS 品番:TYOR-1009 発売日:2023.11.17

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【A】かつしかトリオ『M.R.I_ミライ』

d:神保 彰

普段聴いている音楽では感じることのできない
“無邪気さ”を感じ取ることができる

このアルバムの楽曲の完成度の高さと、お互いの理解がうかがえるアンサンブルの緻密さはどこからやってくるのでしょう。そうなんです、この“大人げないオトナの音楽”を奏でている御三方は、日本を代表するフュージョン・バンド=カシオペアの元メンバーの皆様。やはり阿吽の呼吸で、普段聴いている音楽では感じることのできない演奏の中の“無邪気さ”を、耳から感じ取ることができる素敵な作品です。向谷さんの流麗なシアリング奏法やエレピの音色、櫻井さんの音楽の内殻を支えつつも外殻を担うソリッドなベース、神保さんのルーディメンタルで正確無比なドラム。どこか懐かしいけれど、いわゆる昔“あのバンド”で聴いていた音とも似てるようで全然向いている方向は違う、新しいミライへ向けたオトナの遊び場がそこにあります。(山本真央樹/DEZOLVE)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】神保 彰(d)、櫻井哲夫(b)、向谷 実(key)

発売元:Yamaha 品番:YCCS-10118 発売日:2023.10.25

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【V】ONE OK ROCK『ONE OK ROCK 2023 LUXURY DISEASE JAPAN TOUR』

d:Tomoya

キャリアの集大成とも言えるセットリスト
世界で揉まれ磨かれたパフォーマンスは圧巻

ONE OK ROCKが行った全国6大ドーム・ツアーから東京ドーム公演を収録した映像作品。見終わってあらためて思うのは、本当に大舞台がよく似合うバンドだということ。オープニングを飾る「Wonder」は、ライザーに乗って上昇したTomoyaのド派手なドラム・ソロからスタートし、メンバー登場の演出も含めて、大会場ならではの最高の始まり。そしてソリッドなギター・リフから始まる「Save Your Self」への流れも完璧。その後もキャリアの集大成とも言えるセットリストが繰り広げられるが、世界の舞台で揉まれ磨かれたパフォーマンスは圧巻で、広いドーム会場がライヴ・ハウスかのように見える。その中心にいるのがTomoyaで、プレイもサウンドも明るくエネルギッシュで、バンドを後ろから照らすまさに太陽。(北野 賢/リズム&ドラム・マガジン編集長)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】Tomoya(d)、Ryota(b)、Toru(g)、Taka(vo)、Gakushi(Key)

発売元:ワーナー 品番:【Blu-ray】QYXL-90003/【DVD】QYBL-90005 発売日:2023.11.15

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【A】Greg Hutchinson『Da Bang』

d:グレッグ・ハッチンソン

ジャズ・ドラマーとしての彼とは違った
マルチな一面が垣間見れる

1970年ブルックリン生まれのグレッグ・ハッチンソンがソロ・アルバムをリリース。フィリー・ジョー・ジョーンズに大きな影響を受けたというジャズ・ドラマーとしての彼とは違ったマルチな一面が垣間見れる。1曲目のトリッキーに訛りつつもステディにタイムを刻むドラムに心を奪われた。“カリーム・リギンスみたいでカッコいい!”と思って資料を見てみると、“カリームによって録音された15曲”と書いてある。細かいクレジットはわからないのだが、ジャズとヒップホップを行き来するグレッグとカリームが重なる。全体的には、今時のビートの効いたR&B、ヒップホップといった音楽性で、当然のようにジャズ・テイストも入った多彩な作品です。(坂田 学)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】グレッグ・ハッチンソン(d)、アール・バーネス/ダリオ・デイッダ(b)、マシュー・スティーブンス(g)、レイ・アングリー(key)、シェドリック・ミッチェル(org)、キーヨン・ハロルド(tp)、ベン・ウェンデル(sax)

輸入盤(配信リリース中) 発売日:2023.09.29

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