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【Interview】ジョン・セオドアが語るクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ加入で変化した”ドラム観”

  • Photo:Kazumichi Kokei(Live)
  • Translation:Tommy Morley
  • Interview:Shinichi Takeuchi/Text:Rhythm & Drums Magazine

オルタナ・ロック・シーンを代表する5人組=クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジが昨年発表した8枚目のオリジナル・アルバム『In Times New Roman…』を引っ提げて、6年ぶりに来日。百戦錬磨の凄腕達が繰り広げる貫禄のパフォーマンスで待ちに待った日本のファンを熱狂へと導いてくれた。その屋台骨を超人的なドラミングで支え、鼓舞するのがジョン・セオドア。昨年バンド加入10年目を迎え、円熟に磨きがかかった彼に話を聞いた!

今の俺はドラミングに関して
音楽的に必要とならない限り
スキルやテクニックを高めたり
開拓する必要がない

●久しぶりのインタビューとなるので、少し遡って話をうかがえればと思います。パンデミックによってエンターテインメント界が一斉にシャット・ダウンとなった当時は、どのように過ごされていましたか? ドラムの基礎的な練習を行ったり、新たなテクニックにトライしたりすることはありましたか?

ジョン けっこう面白い過ごし方だったよ。俺はパンデミックになるまでずっとドラムをプレイし続けてきた。2020年の3月上旬くらいまでライヴでプレイしていて、それを最後にすべての予定が吹っ飛んでしまった。俺の記憶にある中で、あれだけ長い間家に閉じ籠るなんて初めてのことだったね。シャット・ダウン中はカリフォルニアの山奥で足止めを食らうような状況がずっと続いていたんだ。だから山の中で犬と一緒にいたりスノーボードをして過ごす日々だったよ(笑)。

それからしばらくして砂漠の中にあるジョシュア・ツリーに下って行った。手荷物はローランドからもらったマイクロ・モジュラー・シンセを数台持って行ったくらいだ。だからドラムを一切プレイすることはなかったし、スペイシーでコズミックなレイヴのビートをシンセのパッチやシーケンスで作ったり、アナログ・シンセで作った変なループみたいなものをいじって遊んだり、リズミカルなものとは少し離れた作業が中心だったね。とにかくブレイクの期間を楽しみ、それまでやってこなかったことを開拓していたんだ。でもいつかそういったアイディアを形にしてみようとも思っている。

あの期間の実態は言葉にする以上に退屈で、映画『ロッキー4』の中で、ドラゴと戦う前にロッキーが山に籠って無精髭を伸ばして丸太を持ち上げたりしてトレーニングしていただろう(笑)? 本当にあんな感じで、一般的な練習みたいなものはしていなかったね。今までやってこなかったことを開拓していたような具合いで、さまざまなものの中にインスピレーションを求めているような状況だったよ。

長らくドラムを叩いていないと感覚が鈍ってしまったり、叩きたくなるような衝動に駆られることはありませんでしたか?

ジョン パンデミックとそれに伴うシャット・ダウンの中で、俺の場合はみんなとはちょっと違う感じだったかな。誰もが孤立した状態で時間を過ごすことになったおかげで、かなりハイテクなスキルを身につけて、それらをYouTubeなんかにアップする人が想像以上に増え、いろんなところで目にするようになったよね。でも俺は意識的にそういったところから違う方向に目を向けるようになった。

昔は一週間もオフを取っていたらそのこと自体にストレスを感じたり、かなり心配するようになっていた。でも今じゃそういう状況っていうのが、自分の中で役に立つことだってわかってきて、それは単にドラマーとしてだけではなく、音楽的にアプローチさせることが快適に感じられるからなんだ。ドラマーとして何かを学ぶ機会を失うのではなく、それを超えた気づきや学びを得る機会につながっていると思っている。とはいえ現在はプレイするショウがたくさんあって、純粋にそこから休息を取るという意味でドラムから離れる時間も楽しんでいるよ。これはかつての自分とは考え方が大きく変わったところでもあるね。

あと俺達は前作『Villains』を作った際、自分達の外に目を向けて新しいサウンドを取り入れることを目指していたようなところがあった。でも今では互いにメンバー同士を頼りにし、内なる部分に目を向けることの大切さも学んだ。メンバー5人が持っているものや、自分達自身をナチュラルな形で表現したものが自分達の音楽だという自負がある。

今の俺はドラミングに関して、音楽的に必要とならない限り、スキルやテクニックを高めたり、開拓する必要がなくて、これって本当に幸せなシチュエーションだと思っている。自分の中から真に湧き出てくるものをプレイしていて、これはとてもナチュラルで自分のものとしてしっかりと残ってくれるんだ。もちろんテクニカルな音楽をプレイしているのだけど、それでいてテクニカルな感覚でプレイしているわけじゃないんだ。

どれだけ力を抜いて本番に挑めるかに集中していて
自分の内なる部分を落ち着かせて
音楽を届けることを考えている

●日々行っている、もしくはライヴ前に行っているウォーム・アップなどありますか?

ジョン 長くやってきて常々感じているのは、単に身体をほぐしたり、リラックスさせるのがほとんどだってことだね。かといってウォーム・アップをしていないというわけじゃなくて、最近は練習用のセットを用意して、それを使ってエクササイズめいたことはやらないけど、適当にプレイしてみるんだ。そのとき何を叩くかは本当に気分次第。

俺達はサウンド・チェックをせず、会場入りしたらそのまま本番っていうこともしばしばある。そうなると特にどれだけ力を抜いて本番に挑めるかに集中していて、自分の内なる部分を落ち着かせて音楽を届けることを考えている。だから特定の曲の特定のパートとかを意識してウォーム・アップすることはないんだ。

バックステージに用意した練習用のセットで気に入ったものをプレイし、その細かいところを詰めていくくらいかな。あとはショウの全体的なコンセプトを考えながらルーズに叩いたり、好きな音楽に合わせてプレイするくらいで、ルーティーンとしている特定のエクササイズもないんだ。練習用のセットで叩けば叩くほど、快適にプレイできるようになっていくという感覚なんだ。ステージに上がる頃には、シャドウ・ボクシングで軽く汗をかいてリングに上がるボクサーみたいな感じなんだ。

昔は“ベストなパフォーマンスができますように!”って感じで緊張しているところを、テキーラを一杯やりながら落ち着かせていたものだけど、今は完全にリラックスした状態でショウに入れているし、かなり落ち着いてプレイできているよ。

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ツアーで使用している新たな機材