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“BOBOオンライン オフ会”@神戸・甲陽音楽&ダンス専門学校【Report】

  • Photo & Text:Isao Nishimoto

神田リョウ、小川慶太を筆頭に数々のプロ・ミュージシャンを輩出してきた神戸・甲陽音楽&ダンス専門学校と、リズム&ドラム・マガジンがコラボレーション! 日本を代表する”個性派”ドラマー=BOBOによる連載セミナー『BOBOオンライン』から派生したイベント『BOBOオンライン オフ会』が4月7日に開催された。ここでは約2時間に及ぶ濃密な内容となった当日のレポートをお届けしよう!!

連載セミナーと同様の空気感で
繰り出される言葉の数々が
プレイヤーの心に深く響く

BOBOが甲陽でドラム・マガジンとのコラボレーションによるイベントを行うのはこれが2回目。前回は2017年、前身校である甲陽音楽学院で開催され、約1時間半のうち演奏は1曲のみ、それ以外はトークが占めるという異例の内容だった。さらに遡ると、2015年にシライミュージック主催でBOBOが初めて行ったドラム・セミナーは音楽ナタリーでも紹介され、当時の記事には“2時間以上に渡ってトークを展開”とある。

そもそも『BOBOオンライン』は、世の中がコロナ禍に突入した2020年、BOBOが“相談”を主軸とするオンライン・レッスンを始めたことに絡めて、受講者の悩みを読者と共有し考えていくことを目指してスタートした連載。ドラマガ北野編集長との会話形式で展開し、プロ・ミュージシャンにも愛読者が多いそうだ。

そのリアル・イベント版となる今回は、会場は専門学校だが参加資格に制限はなく、ドラマー以外も歓迎する旨が告知されたことから、会場にはドラマーだけでなくギタリスト、ベーシストも多く集まった。MCは、もちろん北野編集長。4年間の連載で培ったコンビネーションは鉄壁で、この日も2人で新幹線に乗って神戸入り。筆者は本番前の楽屋にもお邪魔したが、そこでの会話の空気が連載そのままの感じで思わず笑ってしまった。

客席の前には、キック/スネア/ハイハット/シンバル1枚のシンプルなキットが置かれている。そこに北野編集長の呼び込みでBOBOが登場すると、極小音量のスネア・ロールが始まった。打面のエッジ付近で、スティックが打面に触れるか触れないかというくらいの繊細なロール。

そして、ここからいろいろ展開するのかと思いきや、1分、2分、3分と、ひたすらロールが続く。参加者はただ静かに見守るのみ。いったいいつまで続くのか……まるで我慢比べのような時間が過ぎたところでさらにボリュームを落とし、ほとんど音が消えそうになると、おもむろにスティックを大きく振り上げてキックとシンバルをドカンと一発! もし居眠りをしていたら椅子から転げ落ちたと思うほどの強烈なインパクトだった(もちろんそんな人はいなかったが……)。

そんな“演奏”を終えたBOBOが語り始めた。

「ずーっと小さい音が続いている間、皆さんはいろんなことを考えたと思います。僕はそれが、音楽の聴き方としてすごく正しいと思うんです」。

核心を突く一言だと思った。音の粒が乱れそうなギリギリのところで延々と続くロールに耳を傾けていると、BOBOの心の動きに触れたような感覚になる瞬間があった。音を聴く、音楽を聴くというのはこういうことなのだろうか。

トークが始まると、マイクを通した声でスネアのスナッピーが鳴ってしまい、編集長がBOBOに「スナッピーをOFFにしてもらっていいですか?」とお願いする一幕があった。こんな些細なことからもBOBOは話題を広げる。

「たぶん(スナッピーの音が)気になってなかった人もいると思うけど、言われると気になり始めたりして。静かな部屋の空調の音なんかもそうですよね。でも、こういう音が好きな人もいて……前にサポートしていたフジファブリックのダイちゃん(金澤ダイスケ/key)は、スナッピーの音がすごく好きだって言うんです。ライヴで、アコースティック・コーナーとかになると普通はスナッピーをOFFにするんだけど、ダイちゃんは“スナッピーは周りの音に一番反応しているものだから、好きなんだよね”って。そういう捉え方もあるんだなと、目からウロコでした」

終始このように1つの話が別の話を呼び、また次の話につながっていく。その一言一言が参加者に深く響いていたと思うが、これでは時間がいくらあっても足りない。しかし、要所要所で編集長が軌道修正したとはいえ、自由奔放に思えるトークが決して支離滅裂にならないところは、“個性派”と呼ばれるBOBOのドラムが幅広いアーティストから求められている現実と重なる気がした。

さらに、リンゴならぬレモンを使った万有引力の説明から「スティックの重みを感じながら素直に落とすことで、この世の成り立ちをすべて自分の味方にできる」という壮大な話や、「基礎はすごく大事だけど、練習のための練習では何も見えない。やりたい音楽がまずあって、そのために何が必要かということに目を向けた練習であるべき」、「ストロークの練習って流れ作業的になりやすい。もっと1打1打を大事にすることで、いろんなビートのスタイルが底上げされると思う」などの持論を展開。

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