どうも、絶賛大好評シリーズ「最近感動した話 その2」です(笑)
去年の10月のある日、とある女性がドラムの体験レッスンに来ました。
ドラムは未経験なんですと。
ふんふん。
これは良くある話なんですが、この後の展開が中々でした。
「実は3月の末に自分の結婚式があって、そこで旦那がサックスで(旦那さんも初心者からスタート)、ルパン三世のテーマを演奏したいんです」と。
ほう!!(笑)
いいねー、こういうの燃えるー!と思いました。
人間というものは締め切りがあると火事場のクソ力出しますからね。
で、ルパン三世のテーマ(多分一番みんなが知ってるやつ)は、割と難しめというか、あんまり初心者が最初にやるべき感じの曲ではないんですね。
テンポ自体も若干速いし、やってる内容も中々細かったりするのです。
なので、基本的な雰囲気は残しつつ、難しいところは少し簡単にしたりして、なんとか3月までに間に合わせようということになりました。
「誰にも内緒でサプライズでかっこよく決めて、みんなをびっくりさせたい」ということだったので、中途半端は良くないので、何よりも精度を重視してレッスンを進めていきました。
年が明けた頃かな、「旦那がやばいんです」というので、旦那さんの練習の録音を聞かせてもらいました。
確かに、あと2ヶ月しかないのに、やばい(笑)
「旦那連れてくるんで、びしっと言ってもらえませんか!?」と相談されました。
初めて会った人にいきなりビシっと言うって、どんなガチンコファイトクラブ系講師だよと思いましたが(笑)、とりあえず会って演奏してもらって、やっぱりこのままだと3月危ういなぁと思ったので、
「今のまんまだと、ドラムはしっかりしてて、サックスがかなり緩いです。かっこよく決めてみんなをびっくりさせるというレベルには届かないし、かと言って笑いが取れる程へたくそでもない、中途半端な感じになりますよ?」
というような内容を伝えました。
すると旦那さんも、「中途半端は絶対嫌です。」とのことでした。
旦那さんはサックスを習っていたのですが、それと並行して、リズム面と奥さんとのアンサンブル面をおれがレッスンすることになりました(笑)
話が前後しますが、最初の頃の段階で「他の楽器はどうするつもりですか?」と聞きました。
すると「え?サックスとドラムだけじゃおかしいですか?」との返事。
音楽をやっていない人にはあまりピンと来ないかもしれないのですが、サックスというのは単音楽器なので、同時に複数の音は出せません。
ピアノやギターは和音(同時に複数の音を鳴らせる)が演奏できるので、一人で演奏しても様になるのですが、単音楽器を一人でかっこよく演奏するというのは、恐ろしくハードルが高いことです。
ドラムも音階を奏でることはできないので、何て説明したら上手く伝わるかなぁ…と考え、
「口笛と手拍子で、演奏するようなもんです」と説明(笑)
で、本番で演奏するのに他の楽器をどうしようかとなりまして、誰か紹介するのは全然いいんだけど、費用やリハーサルの日程が合わせられるか等色々問題が出てきそうだったので、最終的には、おれが不足楽器分のデータを作って同期演奏をするという案に落ち着きました。
同期演奏というのは、あらかじめ録音した他の楽器のデータに合わせて生で演奏するというやつです。
良くライブやコンサートでも、いないはずの楽器やコーラスが流れてるのは、そういう仕組みです。
ただ問題は、同期演奏に合わせるというのは、初心者にはとても難しいということです。
普通は初心者同士で集まって演奏したりするのが一般的じゃないすか。
そうすると、なんとなーくのテンポがとりあえず存在して、でもみんなそれぞれ早くなったり遅くなったりして、何とか曲を通すみたいなのが当たり前のことなんです。
例えば、ドラムが少し早くなっても、サックスはそれに合わせて早く演奏したりということが可能なんですが、同期演奏の場合はそれが全くできないわけです。
事前に録音されたデータは、ひたすら正確に流れるだけなので、生演奏が狂ってしまったら、それは悲惨な程ずれるし、立て直しも難しいし、リズムや音程のアラも凄く分かりやすいのです。
そういった意味でも、今回のチャレンジはハードルが高かった訳です。
そもそも人前で演奏するというのは、最初は凄く緊張するし、緊張すると練習で出来てたことができなくなるし、それなのに機械に合わせて演奏しなきゃいけないって、かなりハードルの高い初ライブです(笑)
だから、練習では150%くらいを目指すように、後半はかなり細かい部分も指導しました。
本番の緊張やら何やらでパフォーマンスが落ちても、それでも拍手をもらえるように。
段取りとしては、披露宴の入場の際にムービーを流し、ムービー終わりのきっかけで幕が急に開き、演奏開始。
誰も演奏なんて予想していないので、びっくり&素晴らしい演奏に感動して拍手喝采、その中入場という予定です。
で、迎えた本番。
当日はマイドラムセットと音響周りを搬入してセットし、音響の調整や同期の操作も担当しました。(というかおれがそういうのがある程度出来る人間でよかった…)
本番前はもう手汗が止まらないくらいソワソワし(自分が演奏するときはそんなことない)、ムービー終わりのきっかけで曲スタート!
お、出だしいいぞ、二人とも集中できてる!
イントロがこの感じでいけたなら、きっとこの調子で乗り切れる!
あ、やばい、泣きそう(笑)
いや、ドラムの陰にいる知らない人が泣いてたらキモイから、耐えろおれ!(笑)
と思いながら、何とか耐えまして、曲終了。
もちろん練習で一番良かった時と比べたら荒い部分や多少のミスもあったけど、終わった瞬間のみなさんの拍手がマジのやつでした。
その拍手が何よりも大成功の証でしたねー。
二人とも本番数日前に「こんなに部活みたいに頑張ったから、終わっちゃうのが寂しいです」とか「披露宴とか式とかもうどうでも良くて、演奏のことしか考えられないです」とか言ってて(笑)、実際披露宴の前日夜も仕事終わりでスタジオに練習しに行ってたりしてたんですね。
二人とも普通に仕事しながら、半年弱で人前で演奏するレベルまで仕上げるっていうのは、結構な努力ですよ。
誰もが出来ることでは全然無いです。
だから、おれも「うまくいってくれー!」と思っていたし、そんなことが走馬灯の様に思い出されて、泣きそうになった訳です(笑)
終わってからは新婦の親御さん達にもめっちゃ感謝されてしまったし(新婦のお父さんがサックス吹きだから、新郎がサックスを吹いてびっくりさせたいという所からスタートしたのです)、普段自分が演奏するよりもかなり緊張したので、終わった時の充実感もかなりのもので、帰宅後は一人でビール飲みました(笑)
「教える」ということが向いているか向いていないか自分でも未だに良くわかりませんが、こうやって何かの結果が出せて喜んでる姿を見れると、「ああ、やってよかったなぁ」と素直に思えます。
ただそれはおれが教えたから可能なわけではなく、本人がきちっとやる事をやるという前提があって、おれはなるべく最短ルートを案内するだけなので、おれ一人が頑張ってどうにかなるものでもないんですね。
そういう意味では、演奏するのと一緒で、他人と共同で何かを作り上げるということなのかも知れないですね!
ということで、最近の感動した話 その2でした(^^)